今日はこの旅の眼目のひとつである桂浜に行かねばならない。

　駅の案内所で観光地図を貰っていたので、その地図をたよりに南へ海へ。まずメモにあった33番札所である雪蹊寺へ。まあ俺は何番とか気にしてませんけどもいちおう。
　どうも仏像は見られないっぽく、本殿の格子扉ごしに覗きこんでいたら、「みうらじゅん　いとうせいこう」の千社札を見つけた。俺が仏像にハマったきっかけをつくった『見仏記』（角川文庫）を著わした二人だ。
　そっかー、二人も来たのかー、なんかうれしいなあ（みーはー）。
　ようし俺も仏像を見てやろうと思い、納経などの受付で、仏像を見せてくれないかと頼んだ。しかし拝観はできず、高知のＴＶだか新聞社だかが１７体レプリカを作ったが今どこに有るかは知らない、という話ばかりされた。
　畢竟、見られなかったのだった。
　『見仏記』にこの寺のことが書かれてなかったということは、二人も見られなかったのだろうなと思ってそこを後にした。（のちに出た続編の『秘見仏記』（角川文庫）には、彼らが東京からわざわざ見に来たのだと懇願して仏像を見せてもらったことが書かれていた。ちぇ）

　そして坂本竜馬記念館へ。
　俺は『竜馬がゆく』を読んでいらい、京都にある彼の墓に４度くらい行ってる程度には坂本竜馬が好きなので（まあ、ほんとはそこへくる幕末マニアのイラストなどを見に行ってたようなもんだけど）。
　しかし中学生の修学旅行らしき団体や、竜馬をあまりに持ち上げる館の姿勢（そりゃ仕方ねえけど）にちょっと引いてしまい、竜馬グッズを買ったりもしなかった。

　すぐに桂浜に向かった。
　竜馬の像には感心したが、浜ではやはり中学生の男女が戯れていたりしてそれを遠くから眺めていた俺は自分はこの楽しそうな場にいていい人間なのだろうかいやそれならこの中学生たちのほうがあれなんじゃないかこいつら竜馬にどれほどの思い入れがあってこの浜でこの桂浜で楽しく騒いじゃったりしてんだよ、と思ったのかどうかは今となってはわからない。思ってもない事を書くなよ。

　そして、そんなナンダカ乗りきれない気持ちのままに自転車は動き出した。

　だいたいは海の近くのさわやかな道を走った。天気もよく、これといって風に悩まされた記憶もない。

　午後に入って、道は内陸に移動し始めた。それにそって俺も内陸に移動し始めた。
　どんどん高度は上がり、俺とダークジャスティス改はどんどん位置エネルギーを蓄積する羽目になった。
　のぼりきった先になにか建物があるとか（民家でもいいよ）すれば、ああこの道が高くまでのぼる必要性があるのだな、と思うが、ここいらの道は頂上についても下りになるだけで、何のためにのぼったんだよ、と非常に腹が立った。
　将来はぜったいに道路を造る大臣になって平らな道とトンネルばかり造ってやると決めた。これは長い間、旅の途中で思った。（今の俺は山道も平気。もちろんバカだから）

　そうこうしているうちに夜。まったく記憶もメモもないのでずーっと走りつづけていたのだろな。

　夜は流れ星をいくつも見た。空気がきれいなのだろうし、街灯も何もないので星が見やすく、山を押してのぼっているときは空ぐらいしか見るものがないからだと思う。

　昼と同じで、上ったら下りがある。しかし既に記したように、自転車のライトは点かないので、道がどちらに曲がっているかよく見えず（というか逆カーブに見える）、ガードレールにぶつかりそうになることもあるのでスピードを落とす。こわいから。

　それにしたってどうしたって寒い。
　金がないので防寒具を買い足すわけにもいかず（マフラーもないので首にはタオルを巻いていた）、立ち止まれば寒さに震えるのでペダルを踏む足を止めるわけにはいかない。
　そんな夜、ある自販機を発見した。酒だ。
　そうだ、酒を飲んで温まればいいんじゃないか、と飲酒経験のまるでない俺は考えた。それにここは高知だ。
　トサカップという名のワンカップを買って飲んだ。走り出した。
　しかしまだ、寒い。
　また酒の自販機だ。今度はもうちょっと多いのを買おうと、千円札を投入。あ、もうすぐ１１時だ、自販機が停まってしまう、とあわててボタンを押したら出てきたのは一升パック。多すぎだ。
　そのままだと邪魔なので、瓶飲料（サムソンV）の空き瓶に移し前カゴに入れて適宜飲むことにした。

出費
　ジャンボダブルサンド・ダブルカツ三角・その他パン（４０２／尠すぎると思う）　そのまんまポテト（１０３／スナック。わー、今これを買った店の記憶が突然よみがえった。）　チロルチョコ（６０／これもそこで買ったんだ。）　ファミコン通信（２９０／なんで旅先で買うのか不明）　飲み物（３２０／サムソンＶ、ローヤルスターライト､キリマンジャロコーヒー)　酒（１１９０）　竜馬記念館（１３０）