３月５日（土）五日目

　そんなこといっても、酒が身体を温めてくれるなんてのは迷信であり、酒を飲めば身体から熱がどんどん出てゆく。
　それにほとんど飲酒経験のなかった俺だ。ワンカップを開けさらに飲んで、カラダに良いわけがない。
　だんだんハンドルさばきが覚束なくなってきた。
　自分でもわかるくらい千鳥足になってきたので、バス待合所に入りこみ、休憩をすることにした。
　でも高知県が交通量の少ないところで良かったよ。東京なら死んでたなあ。

　このバス待合所の椅子は、特急や観光バスのような感じで心地よく、酒を飲みながら旅日記を記しながら、そのまんまポテトなどを食いながら、ゆったりとすごした。
　毎日放送ラジオを聞いていた。ヤンタンネトランジェだっけ。
　３時頃、新聞配達の人が新聞の束を置きにきた（そういえば、地方ではバス待合所に新聞が配達されるケースが多い気がする。青森でも遭遇した。というか配達夫は驚いてんだろうな、俺に）。

　じっとしていても寒いので、走り始めた。足摺岬には朝方つくだろう。

　何度かバス待合所で休んだ。

　そうこうするうち、もう明け方だ。
　それにしても、妙にうねうねするのぼり道だなあと思っていたら、足摺スカイライン（有料道路）を走っていた。金を払った覚えもないので料金所は一箇所なのかもしれない。というか夜中だったからか。（1995年に無料になったそうです）
　ガードレールの外側の草むらにレジャーシートを敷き、パンを食べ、寒かったが眠気には負け、よこたわり、少し寝た。
　７時すぎ、寒さに震えながら目覚めた。ひざが痛かった。ウグイスの鳴き声が聞こえた。

　それにしてもよく無事だったものだ。
　（俺はずっと、「もしかしたらおれは初日、淡路島での野宿のときに死んでいて、いま自転車で走っていると思っているおれは魂(霊)だけなんじゃないか」と本気で考えていた）

　足摺岬についた。あとになって地図を見て知った事だが、足摺岬には足摺スカイラインを用いなくとも行ける。じゃあなんでわざわざ山道を選んだんだ俺。（地図をもってないからですね）

　足摺岬にはジョン万次郎の銅像がある。室戸岬に中岡慎太郎、桂浜には坂本竜馬、三人で高知県を守っているというわけだ。
　３日かけて３人を見た俺はちょっと満足感。
　弘法大師が一夜で建てられなかった鳥居とかもある。じゃあ鳥居じゃないじゃん。

　だらだらとスタート。

　夜に寝るのは無理だと判った俺は（今ごろかよ）、昼に寝てやろうと思って、昼寝場所を目で探しながら走ることにした。
　こんなところをこんな季節に旅する馬鹿はあまりいないせいか、やたらと地元の人の視線を感じた。公園とかでは寝にくいなあ。今は気にならないけど。

　わき道にそれる草の道で、２時間程昼寝をし、野糞をした。昼間とは言えやはり少し寒かった。