３月８日（火）八日目

　テレビの天気予報を見る。
　ＮＨＫ大好きの俺はもちろんＮＨＫを見る。
　全国の天気のあとは愛媛県の天気。
　東予地方、中予地方、宇和島地方などいくつかの部分にわけて予報していた。なるほどそう呼ぶのか。地方に行くとそれぞれの県が県内をどのようにわけているのかがわかっておもしろい。
　俺が必要とするのは、これから向かう東予地方の天気だが、午後から回復するとのこと。ぎりぎりにチェックアウトして、できるだけ雨の影響を受けないようにしようと決めた。
　もう雨の中を走るのはタクサンだった。雨の中を自転車で走るのは得策ではない、ということを身を持って学んだのだ。普通は経験しなくてもわかる。

　とりあえず宿を出た。

　今治駅前の「大学食堂」という店でオムライスを頼んだ。客は俺ひとりだった。なんつーか、いかにもなボロ店だった。ごてっとした中華なべで作っていた。基本的になんでもうまく食う俺はうまく食ったよ。５５０円。安いな。

　それにしても今治駅前はしょぼい駅前だった。俺の雨中の記憶だから、あまりあてにはならないですし、しないでくださいね。いまはしまなみ海道も通りましたし、タオルで有名になりましたしね。

　小雨だったんだろうか。このぐらいの雨なら大丈夫だろうと走りだす。そして雨は止む。
　助かったと思ったのもつかのま、雨はまたその勢力を取り戻し、ホンブリになってきた。

　雨の中を走るのはもうたくさんだと思っていた俺は、広場に大きなテントを張ったような、屋根つき屋外駐車場というか、トラックを何台も停められるような停める用な、そんなところに自転車を停め、雨宿りとした。パンを食って休憩。

　一時間ほどの雨宿りの最中、小便に５、６回行ったと記憶している。もちろん食ったパンはレーズンバターロールなのである。
　飲み物なしなのに、水分が出すぎな気が。

　雨宿り中にはずっとラジオを聞いていた。やしきたかじんが米不足について喋っていた。そうか、もう毎日放送がこんなにハッキリと聞こえるのか、とゴールの近さをなんとなく感じた。（米不足も懐かしい話題ですね）

　１時間で雨が止んだのかどうか記憶にないが、スタートする。
　東予有料道路という５キロほどの道をを通った（５０円）。あとで地図を見返すと、道なりに行きさえすれば通らずにすんだようだ。じゃあなんで通ったんだろう。

　まあそれもこれもスムーズに調子よく進んだということなんだろう。これといったつらい思い出もなく、夕方まで走りつづけ、川之江市に入る。工業都市っぽい雰囲気。大きなパイプやタンクと、悪い空気。

　１７時半ごろ、「サッポロラーメン」という、正常な神経をしている時には絶対に入らないような店名のラーメン屋に。しかもカツ丼を注文する。

　外に停めておいた自転車につけていたリュックが見えたのか、店の主人が四国一周をしているのかと尋ねてきた。
　もう完走する自信はあったので、そうさ、ぐるっとまわって大阪へ戻るところさ、という意味のことを言った。
　そして「若いうちにしかでけんからなあ」とか言われた。
　そのときは、そうだなあとか思ったけど、そんなことあるかよ馬鹿。
　
　冒険に定年はねえよ。

　また走り出した。暗くなったが走りは止む事はない。
　日付が変わるまでには高松あたりに著くんじゃないか、と思って走っていたが、ヒザが痛くて走っていられなくなったので、高松の２６キロほど手前の坂出Ｉ．Ｃ．のバス停で休憩をすることにした。
　なんだったら眠りたかったが、車どおりは多く、密閉式ではなかったので寒くうるさく、たんに休憩をする。

　それでも眠りたかったので地下道の階段に座ってうつらうつらしながら、ますだおかだの番組を聴きながら、うたた寝。もちろん寒さに震えて何度も目が覚めた。

　銭形とか崇徳陵とか見たいものはたくさんあったが、夜だ。仕方ない。

出費
　レーズンバターロール・まるごとソーセージ（４４９／またレーズンバターロール）　カツ丼（６００）