そしてそのまま、一週間前に四国への第一歩を踏み出したフェリー乗り場に到着する。
　霧のせいで身体はずぶぬれ、しかしひざから下はぜんぜん濡れてない。面白い。

　もちろん早朝で、フェリーの始発には間があった。というより、霧がひどくてフェリーが欠航するかもしれないと言われた。そういやけっこう欠航が多いって言ってたっけ。
　どきどきしながら待合室で始発まで時間をつぶす。

　なんとか船は出た。淡路島に著いた。

　淡路島の東側はもう通ったので、西側を通って帰ることにした。

　ずっと海を見ながら走った。とても晴れていた。甘い甘いパンを食べて休憩した（その店では甘いパンしか売ってなかったのだ）。

　小学生の頃に家族で来た海水浴場の前を通った。海岸が遠方に見えてきた時点でぼんやり記憶が戻ってきて、あー、ここや、と猛烈に当時のことを思い出した。一回しか来てないはずなのになあ。

　走りに走って夕方、岩屋に着いた。明石へのフェリー乗り場だ。

　明石へ渡るフェリーは、夕方という時間帯のせいもあり、乗り場には普通の学生やサラリーマンたちがたくさん並んでいて、汚いかっこで大荷物で自転車で来ている俺はちょっと浮いていた。（ほんとうに「ちょっと」だったのだろうか）
　隅のほうで待って、あとからこっそり乗りたかったが、俺は自転車を、客席を通りぬけて後ろの甲板に置くため、一番乗りしなければならないのである。あとから来たくせに前のほうに自転車を停めて、なんか気恥ずかしかった。（でもそのフェリーの常用者にしたらよく見る光景なんだろうけどね）

　家になにか買って帰ろうと、土産物屋でイカナゴの釘煮を買った。もうナマモノ買っても大丈夫だな、と思ったので。

　そして薄暗くなってきた頃、ようやく本州に再上陸。大阪へ向かって走り出した。
　金の心配はほぼ無くなったので二軒のラーメン屋でラーメンを食った。最初の店はラーメン２国という名前で、なんつう名前だと思ったが国道２号線のことを第２国道、略して２国というらしい。
　なんとなくキムチラーメン。
　次は杭瀬ラーメンという店。ここではキムチ入れ放題でリトルショック。くやしいので、辛いの好きじゃないくせに、キムチいっぱい入れて食った。

　雨が降ってきた。
　傘を差せば片手運転になり、そのうえ無灯火だ。よけい危ないなと思ったのでそのまま濡れ走った。
　とちゅう、神戸あたりで、ビルの軒下で雨宿りをした。寒さにガタガタ震えながら体育すわりをしていた。なにかのはずみで足が攣った。
　突然のことに対処が遅れ、片足が激痛で動かせなくなり、自転車を押したりたまに漕いだりしながらホーホーノテーで家に帰った。

　到着したのは１０日の午前２時。
　久しぶりに素足で踏む木の床になんか妙な感じを受けながら、倒れ込むようにベッドに倒れ込んだ。死んだように寝た。
　翌日インチキ商売的な勧誘電話がかかってきて梅田に来てくれと言われたが筋肉痛で動けなかったので断った。勿体無いことをした。

出費
ローヤルトップ・島と大地の実り・ネスカフェオリジナル・マイルドココア（４４０）　おにぎり２個・サンミー・ピザロール・シャルロットサンド・チョコビスケットデニッシュ・ビッグかっちゃん・キムチラーメン・ラーメン（１９５２）　イカナゴの釘煮（５１５）　鳴門スカイライン・フェリー（１２５０／道路は５０円）

　走行距離　今治→家　３２０ｋｍ

総時間　　約２１８時間
総距離　約１１５０キロ
総出費　約３９５５７円

　あれから１０年以上が経過したいま、読み返してみて思ったんだが、俺、アホやな。