前回も書いた気もするが、地図はくれぐれも濡らさないように。雨が降ってきたらちゃんとビニル袋とかにいれるなりザックにしまうなりするのだ。でないとあとで、べこべこになって困る。
８月２１日（水）四日目
＜７じ。かんばろう。しっかし、金はあるのに時間がないのはくやしいのお。＞
大学の集中講義の都合で、２５日くらいには戻らねばならなかった。つまり２４日くらいには実家に戻っておきたかったし、２３日にはフェリーに乗らなければならないということが容易に想像できた。なのに２１日の段階でまだ広島にいるのである。悠長なことは言っていられない。「かんばろう」は原文ママ。
＜体がいたい。首がいたい。でもがんばるよ。まあまあ。てきとうに。体をほぐしてうんことかして出発しよう。ゆっくり。＞
首が痛いのは、おそらく俺の寝方が悪いんだと思う。それは家で寝ようとコンクリの上で寝ようと同じで、朝は首が痛い。早死にするような気がする。困るなあ。（2006年に頚椎ヘルニアが発覚しましたが当時からだったんだろうか）
８時半ごろにホテルを出た。
なぜか広島城を無視した（一往見たりそのそばにある銅像を撮ったりしたけど）。
広島にはとくに見たいものはなく、山口県にある高杉の墓しか残る目的はなかった。
つまり何も見ずにひたすら西へ走るだけとなった。
修学旅行で行ったからいいか、というのと時間がない、というので鳥居マニアなのに厳島神社の両部鳥居も省略。（当時の俺はそれほど鳥居マニアじゃなかったんですね。2005年に鳥居を見に行きました）
＜１１：００、大竹市。なんか天気が心配なので急ごうと思う。今ロッテリア。＞
空は薄曇り、というか、雲でちょっと暗くなってきた。
こういう時、すごく不安。
走っているときに雨が降ったって、雨宿りするしかないのである。
だから、ふだん自転車に乗っていて雨が降ったときは、いやな気持ちは全然せず、すぐに帰れる家のある生活を幸せに思う。
大竹市は広島県の西端。ここから山口県に入る。
＜１４：３０。柳井。ちとポツ、ポツ、とあったので、地図をしまって走ろう。あと６０ｋｍくらいを。＞
普通に考えれば、自転車なんだから「あと６０ｋｍくらい」なんて軽い言いかたはできないはずなんだけど、旅先じゃあ距離感覚がマヒしているわけで。
小雨の降るなか、ショッピングセンターに入り適当に休憩して公衆電話で帰りのフェリーを予約する。ああ、いまその光景を思い出した。（でもだいたいどこのショッピングセンターも電話は吹き抜けのところにあるんだよな。２００７年の今となっては記憶がごちゃまぜになってます）
そういえば、旅先での理髪店というのは（とくにチャリ旅中）、いい。
一時間ばかりただ座っているというのは、すごく回復するのだ。
＜１５：２４。さんぱつにいった。ドリーム。家から何分くらい、とかきかれた。子供がたわむれていた。女の人だった。ねむくなる。＞
光市のあたりだ。
ずっと髪を切りたく思いながら走っていて、いくつか理髪店を見ながら見過ごし、ええいと入ったところがここ「ドリーム」だった。小洒落た感じのところで、男の店長のほか、女の人が何人かいるようなところだった。
＜さんぱつ屋の人が、とーくからきたんですか、とかきくから、ええ、かなりとおく、と。オレの自転車みたんだと思うけど、「何分くらいかかりますか？」ときかれてビビる。わからんわ。＞
別の人に髭をあたってもらっていたときとかに、店主は店の外に出て、俺の自転車を見たりしていた。それでこの質問が出たんだと思うけど、何分ったって、そんな細かい数字わからんよ。
＜さんぱつ屋で肩もんでもらってきもちよかった。うまい人だなありゃ。＞
肩たたき、というのはこれまで経験があったが、肩揉みというのは初めての経験だった。疲れ切った身体がここでなんかほぐれた。というか人に言わせれば俺はぜんぜん凝っちゃいないそうだけどな。
＜ポプラ、Ｍｒ.ＭＡＸ。九州ぽい。＞
人と話したりしないので、店舗を見てその地方性を理会しようとする俺。
ミスターマックスを見て九州ぽいと思ったものの、ミスターマックスは九州に本社があるわけではないようだ。ポプラは山陰にも多く分布する（鳥取くらいまで）。
＜１８：５０。徳山市内のサンデーサン。とりあえず一人で入ったことのないとこへ、てことで。高いセットをたのんじゃったぞ。１７００円くらいの。まいいか、明日かえるんだし。もうフェリーもとったしな。＞
１７００円が一般的に高いセットなのか分からないが、俺にとっては結構高く感じた。コンビニ弁当が３つは食える。
＜今日は夜中まで走るか？ いちおうけいさんしてみよっか。あと５０ｋｍはイケると思うし、いかねばならぬだろうし。防府はいける。その先だ。＞
よる７時ということは今日は残り５時間、ということは５０キロ、という計算である。つまり時速は１０キロ計算。俺は平均１５キロ弱くらいで走るので、休憩時間などを考慮にいれると、じっさいこのくらいで考えておいたほうが、予定から遅れない（遅れない分には、まあ困らないから）。
＜メニューをすぐさげたのは、メニューの写真と肉の大きさがちがいすぎるからだと思う。考へたら注文してから早かったな。１０分くらいだろう。＞
べつにメニュウと違ってもたいして困らないのだけど、旅先ではもりもり食べる俺は、メニュウがないと追加注文しにくいのでちょっとめんどい。
＜オレ、指さすの（メニューとか）中指だ。なぜかしらんが、奇妙だろうな、人。＞
これは理由不明だ。（単にいちばん長いからかな。ゲーセンでもタッチパネルは中指な気がする）
「人」は店員などのこと。
窓の外では雨が降ってきたが、飯を食っている間に雨はすこし落ち着いたので、出発する。
この日は寝ずにひたすら走った。どう考えても１５時間以上走ってる。
出費
宿泊料（出る時に消費税分１８０円を） オールスポーツ・コカコーラ２・コップジュース・うめスカッシュ（５４５円。コーラは５００ｍｌ。） リブサンドセット・チーズバーガー・晩飯（２６１４円） 散髪（３５００円）
本日の睡眠時間
７時間（ホテルで７時まで）
本日の水分 ３０００ｍｌ
走行距離
ぜんぜん休憩をしなかったらしく、夜１２時の時点でどこにいたかよくわからないので、最後に合計距離を発表。
８月２２日（木）５日目
ひたすら走る。ときどき立ちどまったり座ったりして眠気を覚ます。そりゃあ眠い。
＜そういやきのうの夜中に白い人が。後述。＞
といいながら旅日記には書いていないので、ここで書くけれど、小野田か宇部かそのあたりの道を深夜に走っていて、ふと中央分離帯を見ると、白装束の女の人が立っていた。
すんごくびっくりしたが、引き返して確認したりはせずに、そのまま走り去った。何だったのか不明だが、幽霊とかのほうがまだ納得しやすいよな。
＜さっき、ふとつけたＦＭのＴＯＫＩＯの国分太一の番組のゲストが鶴瓶さんとさんまさんだった。すげえ組みあわせに当方びっくり｡おもしろかったよ。ＦＭの選局かえたらまた上記の放送やってたよ。＞
明石家さんま・笑福亭鶴瓶という二人はよくお互いのことをネタにするが、同じ番組に出るというのはあまりなかったので、二人のファンの俺には新鮮で面白かった。違う放送局にかえたらまた同じ番組が放送されていた（時間差ネット）ので、また聞いた。そういえば、兵庫から岡山へゆくとちゅう、圭修のラジオを聞いた。これも面白かった。
＜４じ。ねむいがねるとこなくて今ドライブインでコーヒー。高杉の墓まであとわずか。どーしよ。＞
前日の朝から一睡もしていない。めちゃめちゃ眠かったのでとりあえず入る。
畳の席に座り、アイスコーヒーを注文するが、それまで飲み物を飲み過ぎていたので腹はたぷたぷで、ほとんど飲めずそのうえ眠れずただ休憩に使った。
＜というか小倉まで４０ｋｍくらい。もう切ったかも。どーすんだ。なんか観光するとこあるんだろーか、オレ。＞
観光する所はあるだろうけれど、俺が楽しめるようなところはあるのだろうか、という意味なので住民のみなさんは気を悪くしないようににね。
＜で、５じ、小月駅。あかるくなってから東行墓へ（以下数文字判読不能）行く。＞
小月駅というのはもう東行墓と目と鼻の先の距離にある（とはいえ５キロはある）。
とにかく眠くて仕方がなかったし、朝の５時に行って見ることができるのか不安だったしまだ薄暗かったので、明るくなるまで過ごすことにした。そうでもなけりゃベンチが分割式でみどりの窓口のあるようなこの駅で寝ようとは思わない。なんかハエがたかってきて困った。
＜６じ。東行墓の前。わけもなく鳥肌がたった。記念館とかはまだあいてないだろな。で、ノート類はないよ。がっくり。
土葬らしいぞ。＞
ちなみに東行というのは、ご承知の通り高杉晋作の号である。この名は当時のアイドル西行に倣ってつけられたものなのもみなさんご存じでしょう。
ノート類は、新撰組の墓（壬生寺）にも、竜馬の墓にもあった、歴史ファンの熱いメッセージ（死人への）が記されたおなじみのノートのこと。絶対あると思ってたのに。
というか東行の墓の前は、そんなものの置ける雰囲気ではなかった。だから高杉ファンは京都に足を運ばねばな。
＜１０：００前。九州。トンネルの場所探しに手間どってしまった非常に無駄をしたとう大もとくらしだったよ。＞
さて記述はすでに九州上陸。時間を少し戻そう。
東行の墓を見た俺は、Ｒ９（久々に道番号がでたな）を南へ、九州へと自転車を進めた。
壇ノ浦に着いた。関門橋が見える。
おお、ここが壇ノ浦古戦場かあ、としばし休憩したのち、関門トンネルを通って九州に渡ろうと思った。
関門トンネルは自動車の通るトンネルと人間や自転車の通るトンネルとはわけられている。わけられているばかりか、その入り口は遠く離れている。
まず、道路案内にしたがって着いたトンネルは、自動車専用のところで、入り口で止められた。そこで自転車トンネルの場所を聞き、なんとかたどり着いたそこは、壇ノ浦古戦場の道路を挟んだ反対側だった。
視界に入っていたにもかかわらず、気づかなかったのだ。これは俺の過失であるが知らない人は気づかないってこれ。
そして午前中に九州上陸。「とう大もとくらし」はもちろん灯台下暗しだ。メモを書くときに面倒なので「大」を使う。「問題」も「もん大」と書くことはむかしどこかに書いた。
フェリーはすでに２０時出港のものを予約していた。時間はじゅうぶん。
新門司港までの最短ルートは、山越えをするような気がしたので、わざわざ小倉まで行って、そこから港へ行くことにした。小倉からは九州旅のときに通った道になるから分かりやすいとも思ったのだ。じっさい山越えはたいしたことがなかったということは翌年知った。
＜北九州市を自転車のことを考えない町に認定する。徳山市の自転車用歩道は素晴しかった。＞
小倉までのＲ３は、車道は異常に狭く、やたらとアップダウンがあり、歩道はガタガタで走れないという、自転車に不便な道だった。二度と通るものかと心に決めた。そしてそれ以来、通っていない。
＜１３：００。港は目前。あとなん十分てとこ。どーするよ。ひとまずモスへ。
追加注文してまだゐる。のみものを注文しないと水がでてくることを発見した。＞
水分の摂り過ぎで腹は全く減っていなかったが、時間つぶしに入る。
そんなことしても時間は余る。早めに着いたフェリー待合室で昼寝をして時間をつぶしたのち、一本早い便に変更して帰ることにした。
＜そして二等洋室。これに慣れると。＞
雑魚寝はできなくなるね。
結局また、風呂に入らなかった。俺は今だにフェリーの風呂に入ったことがない。
出費
コーラ２本・爽健美茶・アイスコーヒー・ザクア・コーヒー・十六茶・カルピスソーダビタミンレモン・アイスコーヒー・リアルゴールド他（１３６６円） パン・ナンカレードッグ・ハンバーガー・ポテト他（１３２７円） トンネル（２０円） フェリー（８３００円） ウイスキー（６５１円）
水分 ３０８０ｍｌ
睡眠時間 ３０分（小月駅）
走行距離
広島−新門司港 ２７０キロ
８月２３日（金）最終日
６時に船は大阪南港に到着し、そこからはなんということもなく家に帰ったよ。途中パンを買って道端で食べたよ。
出費
パン・おにぎり（２３６円） のみもの（１１０円／種類は不明） ＳＰＡ！（３００円／雑誌）
睡眠時間 ５時間（フェリー内）
水分 ３５０ｍｌ
走行距離
大阪南港−摂津市 ３０ｋｍ
通算距離 ６９０ｋｍ
