日付は変わっても走り続けていた。ＮＨＫ第一を主に聞きながら。
　前日の昼すぎから降っている雪は、相変わらず降ったり止んだりしている。雪が少し降りやんでは走りだし、また雪が強く降りだしたら雪やどりをする場所が見つかるまで走る、という繰り返し。つまり雪には降られている。

　そんなことを繰り返している間にも、体はどんどん濡れていき、どんどん冷えていく。休憩していると、体からは湯気がたちのぼる。熱がどんどん出ていくのがはっきりと目で確認できる。正直な話、アウトドアの入門書などにはこういうときの対処法は書かれていない。そもそも、雪の降る道を自転車で走れとは書いてないし、そもそも雪が降るなか、ジーパンで走ることが間違っているのだ。
　俺が悪い。

　いつの間にか福井県に入っていた。いちおうの宿泊予定地である小浜市は近い。
　屋根と壁のあるバス待合所で雪やどりをしていると、睡眠不足と疲労からなのか、眠くなってくる。
　少しの時間うつらうつらして、目が覚めると、ひざが冷えて、ものすごく痛くなっている。そういえば、と四国で何度も同じような経験をした事を思い出した。

　成長しないなあ俺。

　雪は朝になっても降りやむ気配をみせない。歩道は既に自転車の走れる道ではなくなり、車道を走れば車に雪をかけられる。路面が凍結していてハンドルを両手で持たないと転びそうになるので、傘もさしていられない。
　上半身が中まで濡れないことをゴアテックスに感謝する。ただ下半身は雪でずぶ濡れ。よく動いていたもんだ。下半身も雨具は必要だ。

　そしてまさしく、ホーホーのテーでＪＲ小浜駅にたどり着いた。しかし到着したのは午前中だった。宿をとれてもチェックインまでこのずぶ濡れの体をどうすればよいのだ。

　で、

　家に帰ることにした。

出費
缶コーヒー・コーラ・越前かに寿司・缶ビール北陸づくり（１４００）
　ペリカン便で自転車と荷物を送る（１０６２０／自転車１００００円）
　ＪＲ小浜−敦賀急行・敦賀−大阪特急（５７６０）
　月見そば（３５０）　文庫本（５２０）　

　こうして、唐突に旅は終わった。まあ、途中、出雲や鳥取をゴールにしようと思っていたのが小浜まで行けたのだから、頑張ったほうだと思うけど、後悔の念が数多く去来した。どうして夕方に雪が降ったのに豊岡で宿に泊まろうと思わなかったのだろう、いや、思ったけどどうして大丈夫だと思ったのだろう、あそこで豊岡に泊まっていれば夜中に雪まみれになって走ることもなかっただろうし、小浜で力尽きることもなかっただろうし、まだまだ旅は続いていたはずだ。

　しかし周知のとおり、後悔は先に立つものではない。