２月２４日（月）四日目

　ネッピー館３０３号室には［赤瀬川］という名前がついていた。俺は赤瀬川原平が好きなので感慨ひとしおだったのだが、後に赤瀬川原平もここに泊まったことを著書で書いていて、より感慨ひとしおだったのだった。
　１００人以上を殺すという夢を見て、目覚めた。

　窓の外。晴天ではないものの、雨は降っていない。
　天気予報によれば、明日もあさっても曇り空。しかし、残り４０キロ強、一日２０キロ歩けばいいのであり、つまり楽勝ペース。ってそれが楽勝ペースなのか？　２０キロが。
　食料は、アルファ米（湯で戻す飯）が５食、スパゲティが５００ｇあるので、あと二日で到達するとすれば、じゅうぶんだ。多すぎるといっていい。
　靴はまだ生乾き。部屋のドライヤーはあまりコードが伸びなくて、乾かすのがめんどうだったので、そのまま履いて出発した。
　てくてくと歩き始める。夕方まで歩けばとりあえず目標地点に達するので気分はいい。焦りはない。
　事件があるわけでもない。
　ＭＢＣラジオを聞きながら、一時間に一回ザックを降ろして休憩しながら、旅は続く。
　１１時頃、チャリ旅人（本物）が、俺を抜かしていった。
　俺は二年前の自分を思い出した。俺もあんなだったんだなあ。
　でもあの人は、佐多岬ロードパークが軽車両通行禁止であることを知っているんだろうか。知らないならあの人はショックを受けるんだろうなあ。
　立神公園というところで湯を沸かして昼飯を食った。風が強かったので着火に時間がかかった。マッチを何本も使った。その手前にあった台場公園にしても、キャンプ場併設という感じで、なんかいいところが多い。
　ラジオからは、歩いていこうだかそんな歌詞の歌が流れている。サビの部分を口ずさみながら、めちゃめちゃ歩いてるっちゅうねん、と思う。
　１４時前、佐多町。もう佐多岬は近いのだな。てくてく歩きながら、なんとなく２年前を思い出しながら。
　案の定、戻ってくるチャリ旅人（前出）と出会った。軽くあいさつをした。あの人は最南端まで行ったろうか。バスで行ったにしても、悔しかっただろうなあ、と俺も悔しくなる。よし、俺が夜中に通り抜けてやるぜ、と思う。
　そして佐多岬へ向かって県道６８号線。
　佐多町のＡコープで、助六寿司と１リットルパックのリンゴジュースを買った。自炊をするつもりはなかった。この先水を得られる場所は無いなと思ったから。
　歩きながら、ひどく２年前を思い出す。２年前の昼間に通った道だから結構覚えているのだ。
　思い返すに、これから先、いいテントサイトがなかったように思ったので、大山祇神社の鳥居の横にテントを張れたらいいなあ、と思った。
　記憶通りの場所に大山祇神社はあり、そこで休憩して、いい時刻になるまで待つことにした。

　向かって左側にテントを張りました。

　待っていたのは、その近くで除草かなんか知らないけど、なんか作業というか工事というか、地元のおばさんとかも作業に参加しているまあそういうのが終わるのを待っていたのだ。まだテントを張り慣れないというか、張っていい場所なのかどうかも分らないので、誰もいなくなってから張りたかったんだ。でも先へ進むのはもうしんどいので、いつまででも待ってやるさ、という気分で座り込んでいた。
　しばらくすると、その人たちも作業が終わったらしく、おばさんたちは帰りじたくを始めたので、さあテントを張ろうかと考えていると、帰る途中のおばさん（おばあさん一歩手前）が話しかけてきて、ネットに入ったみかんを呉れた。
　ちいさなみかんたちだったが、ぜんぶうまかった。その人に、ここにテントを張っていいものかと聞いたら、まあいいんじゃないのかといわれたので、テントを張った。

　そして１６時半、すでにテント内。

　かかとが痛い。マメが痛いとかじゃなく、骨や肉を含めたカカトが痛い。
　右ふくらはぎも痛い。やはりオーバーペースなのだろうか。初心者だから加減がつかめない。
　一往ここは神域と考えて、火は使わないことにした。助六寿司を買っていたので大丈夫だ。翌朝はチョコなどでごまかして、途中で飯を食おうと決めた。
　まだ夕方なので、車が通る。道路からすぐ近くだから音が気になる。まだ、鼻が利かないというか、いい場所を見つけられない。
　ここに来るまでに見た酒屋や風呂屋にも行きたいと思ったが、一度テントに入ると出無精になってしまう。
　それに、テントを無人にするのはなんか心配だし。
　靴が濡れたまま歩いたせいだろう、すごく足が臭い。テントだから余計に。
「だれかテントを張っているよ」というおばさんの声がした。しかし咎められるわけでもない。
　それにしてもハヤイペースだ。佐多岬まで一週間はかかると見ていたのに、志布志を出発して４日目にして到着なのか。とりあえず、３／３に友人と約束をしていたのでそれまで九州で粘るつもりだったので、どう寄り道しようかと考える。至った結論は、次回。
　そしてやはり早く寝入ってしまい、深夜に目覚めた。ラジオをつけ、ＭＢＣ［ラジ天］を聞く。面白葉書を紹介する番組だったので、頑張って聞いた。むろん笑いはしなかった。面白かったけどね。


　翌日の予定を立てた。とりあえず、佐多岬ロードパークがあるので、夜になって人がいなくなってから侵入するということで、その入り口までゆっくり歩こう、と。予定でもなんでもないが。
　
　
　
　

　２４日の出費
レモンサイダー・アップルジュース（３４１）
助六ずし（３６５）


２４日の歩行距離

根占−佐多町　２２キロ