８／２６日（前日）
２００３年８月２６日（前日）
ま、例によって、自転車に乗る前日から書きはじめますね。そもそも家を出た時点から旅は始まっておるわけですし、この文章にはいまだ自転車の遠乗りをしたことのない諸君のためにそのヤリカタを啓蒙するという意味合いも言外に含んでおるわけですから。（書いちゃったら言外もくそもねえけども）
毎度なにかしら不備のあった前準備も今回は完璧。
あらかじめライトの電池も交換したし。タイヤの空気もばっちりだ。一泊だし予備の電池はいらないな。
なにしろ今回は荷物を減らそうと画策しておりました。予定では１泊か２泊かってとこだったし、荷物が多いと旅人に丸見えでかっこわるい。（前にも書きましたが、旅人をかっこわるいと思っているわけでは、もちろんない。１泊くらいしかしないくせに旅人ぶるのがかっこわるい、という感じですね。俺みたいなもんが旅人を名乗るなんて烏滸がましいにもほどがある、と）
厳選された荷物たち。
まず寝袋。これは例によってモンベルのクローアップシーツ（商品名）。これは非常に薄手でかさばらず多少の水気も大丈夫というものであり、春ごろから最近まで毎晩おれはこれで寝ていたくらいだ（布団をひかないからだ）。そのおかげもあっていい感じにへたっており、さらに収納性は増していた。
あとはなんだっけか。替えのＴシャツ。半袖と七分袖。
デジカメ。パナソニックのＤ−Ｓｎａｐ（ＡＶ３０）とミノルタのＤｉｍａｇｅＸ。予備バッテリをひとつずつ。
鳥居撮影用の銀塩カメラであるミノルタのベクティス２０００。APSですけどね。
手拭い２本。
メモ帳。
これらをデイパック、ジャックウルフスキンのｒｉｐ ｒａｐ（商品名。どうも子供用らしい）に入れた。
こんなちっちゃいリュックでもすかすかする。なんて小荷物。
あと、自転車の前袋にひやけどめ、ネールカラー、モンベルのオールパーパスソープ（自然に対して負荷が尠くいろいろ使える液体石鹸だそうです）、フック付きゴム紐、帽子、安全ピンを格納。
もう下に地図おいときますね。
２０時前に出発。
２０時１５分、つつがなく三鷹駅に著く。駅前で、横縞シャツを着たグワシの人を見かける。ほんとにいつもあのシャツなんだな。
それにしても、２年前にいわきで見た有名人もそうだが、俺はもじゃもじゃ頭の有名人しか、まだ見たことがないな。
いつものように駅前の交番の横で自転車を折りたたもうとしたとき、後付けの荷台（ゼファール製）のネジが、ゆるんでいることに気づいた。そうだ、こいつはそういうやつだった（振動で緩むのか、走っているときに荷台が落ちたことがある）。出る前にネジをしめるの忘れてた。ねじ回し持ってこなかった。
まいいか。
みどりの窓口で館山までの切符を購入。２５２０円。
２０時３５分、東京行きの快速は三鷹を出る。
そういえば、晩飯をまだ食ってないんだけど、大丈夫だろうか。まあ予定では２０時５８分に三鷹を出るはずだったから、その余った時間でメシ食おう。
２１時１０分、東京駅に到着。総武線快速だっけかの千葉行きに乗り込む。これが２９分発。
千葉には２２時１２分着。ここから内房線だかなんだかに乗る。けっこうはやくから列車は駅に停車するので、座席を確保するため早めに乗りこむ。
席に自転車を置いてホームに出、とりあえず爽健美茶（１５０）を購入し、席に戻る。よく知らないがクハ１１１系であり、ボックスシートとベンチシートの混在するタイプだ。
２２時２４分発車。
予定通りだ。
ちょっと早めに三鷹を出発したはずなのに。
メシを食う時間が捻出できなかった。
まあ、仕方がないか。
列車内は冷房がよく効いていて、やたらと寒かったので、半袖シャツの上から七分丈のシャツを着た。
暇。猛烈に暇。
なにしろ今回は荷物を減らす計画があったため、本なども持っておらず、どんどんと発生する暇をつぶすことはできず。夜だから車窓からの景色を楽しむこともできず。
さらには、いつもなら、別にルートの変更もないくせに地図とにらめっこして時間をつぶす、ということをしていたんだけど、今回は、地図ももたないのでなんともかんとも。
しかたなく持参のネットワークウォークマン（ＮＷ−Ｅ１０）に入れたイエロモンの曲をきいて目を閉じ気を紛らす。これ内蔵充電池だから電池が切れたらオシマイなので、走行中に使いたかったんだが。
地図もなくて、どうやって２００キロも走るんだ、とお思いのあなた、さすがに俺もバカではない。いちおうメモを用意しておいた。
携帯電話（ＴＫ２２）に、このようなメモを。
Ｒ１２７かずさみなとまで
駅をこえたら左の道に
Ｒ４６５に。
Ｒ１６と交差するので左折し富津岬
Ｐ９０とＲ１６をいったりきたり。
Ｐ８７
木更津あたりでＲ１６
市原でＰ２４
美浜区で海沿いにＲ３６７をすすむ
舞浜大橋、荒川湾岸橋、新曙橋、新末広橋、有明台場、虹橋
引用おわり。
ってこれでわかるのか俺。わかったのか俺。
寝てしまうと館山に著いてから野宿をしにくくなると思って、眠ることもなくただ座っていた。
木更津をすぎたあたりから、外は暗闇の様相を呈してきていた。思ったより、繁華では、ない。夜中に飯を食うところなどあるのだろうか、と不安になる。
上総湊で、客はどっと降りた。
そこそこ大きな駅なんだろうな、んじゃここはそこそこの街なんだろうな、と期待をする。
ただただ時間は過ぎて、ようやく館山駅に到着した。
２００３・８／２７（初日）
館山駅に著いたのは０時１分だったかな。終電ですね。
改札を出てしばしたたずみ、たしか、こっちだっけ、と足を左に向けた。
そうそう、こっちだった、と階段を降りて、去年の夏に自転車をおりたたんだ地点に。
去年と逆の動作、つまり自転車を走行形体に変形させる。荷物を前バッグや荷台に移動させる。
雨は当然のように降っている。まあこれは出発前からわかってたことだから、いいか。
出発前から分かっていたことなのに、なんの雨対策もしてきてないんだけど。
どうしようかなあ。
いちおう、こんかいは、夜は走らないようにすべし、と決めていた。
辺りを見回し、朝まで雨がしのげそうな、寝袋を広げられそうなところを物色する。
いいかんじのところがないなあ。改札前のベンチでもよかったんだけど、すでに先人が寝ていたし、館山駅は有人駅でけっこう大きいので、寝坊するとややこしい。
別のところにしたほうがいいかもしれない、と自転車にまたがり雨のなか走りだす。
やっぱり、けっこう降ってる。
１分も走って、セブンイレブンを発見したので入店。そういえば腹が減ってたんだ。忘れてた。
直巻おむすび高菜マヨネーズ・とり五目・照焼ソーセージの３つを手にレジへ。
入り口の脇にはおなじみの傘とレインコートが置いてある。ふーん、雨具かー、やっぱ必要かなー、買おうか買うまいか、としばし悩むが、３８０円のレインコートで悩むのも時間が勿体ないと思ってそれもレジへ出す。計７４５円。
店を出たまんまえに十字屋というスーパーだかなんだか店があり、その入り口わきのひさしの下のベンチにこしかける。ちびちびと雨が漏れてきて、まったく濡れないわけじゃないんだけど、とりあえずそこで晩飯。
しばらくじっとしていた。
いつもなら、一服しているところなんだけど、今回は、禁欲的な旅をもめざしていて、酒煙草なしで行ってやろうと思っていたので、がまんする。
地図もないわけで、ただただ、じっと座っていた。
４３分、自転車にまたがる。ここじゃ濡れるから野宿は無理だ。
北へ針路をとり、ペダルをずるずると踏む。
なんといいますか、走りはじめると、俺のダメ人間ぶりがわかるというかなんというか、けっこうな雨の中、街灯の尠い道を無灯火で、うつむきながらただただペダルを踏む、という行為が、たまらなく楽しいんですね。あー、これこれ、これが俺のチャリ旅（軽い造語）やねんなあ、なんて。
我ながら、ほんまアホですわ。
しばらくたつと、ようやく左手に海が見えてきた。沖合には光を放つ船たち。なんかを漁ってるんだろうなあ、なんて思いながら、このまま雨宿りをする場所が見つからないと恐らく朝まで走りつづけてしまうであろう自分の性分が心配になりながらペダルを踏む足が止まることはなく。
１時１８分というから、３０分ばかり雨の中を進んだんだろう、鉄道駅に到着。那古船形駅。館山からたったヒトエキだ。
地方路線にありがちな改札や切符売り場や待合所が一体化した建物。
走っているときは気づかなかったけど（気づけよ）、建物に入ると、屋根に当たる雨の音が、けっこうな降りであることを認識させられた。
上の写真をご覧いただければおわかりのように、終電が出たあとにもかかわらず、電灯がコーコーと光を放っておるし、雨の音のざーざーや、秋の虫が元気に集く音がうるさいけれども、まあ、寒くないし、いいかな。
サンダルを脱ぎ寝袋に入り、デイパックを枕に横たわる。
５時に目が覚めた。
まだそとは暗いとも明るいともどっちとも言えるような言えないような感じ。
いくらか虫に刺されたようで、かゆい。
雨はまあ、降ってます。
しかし朝はあっというまに来ますな。数分もすると、今や明るいと言ってよかろう、というあんばいに。
んじゃ出るか、と自転車を置いてある外に出るが、思ったより雨が降っていたのでまた駅にもどり、３８０円のレインコートを装着し、５時１８分、スタート。
しかし数百メートル進んだところでスーパーマーケットを見つけたので、休憩。
まあ、あまやどりですね。
小雨ていどではなく、普通に降っていて、なんつうか、簡単にいうと、めちゃめちゃ寒い。夏なのに。
軒下のベンチに腰掛ける俺の脳内が「帰りたい」という気持ちで満たされる。
しかしひと駅だけ走って終了、って結果はどうなんだ、ヘタレ全開やん、どうなの実際、走るの走らないの、すでにずぶぬれだけど、すごく寒いけど、でも走るの、どうなの、死なないの、等々。
１０分ほど煩悶したのち、小降りになったのでスタート。けっきょくそういう男なんです。
ま、天気予報によると午後には止むような話だったので、それまで適当にがんばろう。
なんて思いながらまあ、思いっきり走ってしまうんですけど。
５時４８分。
崖の観音と呼ばれる寺が見えた。いちおう地図で名は見ていた。
俺は観音が崖に彫られているんだろうと想像していたんだが、そうではなく、お堂が崖にへばりついているような、三仏寺のような、そんな感じだった。
まだ開いているわけもないだろうと（なにしろ６時前だ）、下から写真だけ撮った。（どうやら崖に十一面観音が彫られているそうです）
隣にあった神社の鳥居も撮影。
雨はじょじょにあがってきた。雨合羽を脱げるほどのあがりかたではないものの、体感温度が高まってくる。
鳥居をチェックしながら、６時、日本一ビワの郷宣言町である富浦町に入る。
さらに鳥居をチェックしながら、ずるずると進む。雨はまた普通の降りに戻る。かといって足はとまらない。
このへんの道はほぼ自動車優先の道であるから、トンネルにはわきに人道トンネルと呼ばれる小規模なトンネルがある。そのなかで、休憩。
こういうときの休憩は、１分あるかないかです。深呼吸して、息がととのったら、終了。タバコ吸うと休憩時間がおおいに伸びるんですけどね。吸ってないから。
そう、さっきも書いたけど、今回は、禁酒禁煙でいきましょう、と。なので、まだ、出発してから一本も吸ってません。まだ出発して６時間だけど。
６時２２分。
富浦海水浴場だか豊岡ビーチだかの入り口。
なんか休憩できる屋根のついたなんかがあるだろう、とそれを求めてそちらに向かう。
もちろん海水浴場は営業されているわけもないんだけど、雨宿りに最適な、やたらとぼろいシャワー施設に自転車ごと入る。
ただただぼんやりと、ぼんやりと、立つ。
３０分ばかりぼんやりとしたのち、６時５０分、再スタート。
とはいえ、べつに雨がやんでいる、というわけじゃなく、ただ止まっていても時間が勿体ない、という貧乏性が俺の体を動かした。
Ｒ１２７ですね。
雨合羽で上半身は守られているものの、下半身および首もとはどんどんずぶずぶ。
つば広の帽子をかぶっていたので顔はまあ、そうたいしたことにはならなかった。（とにかく、めがねが濡れると不快で悪視界なのでね）
雨合羽のすそがひらひらとたなびき、まるでマントのようだとマントの好きな俺は嬉しくなる。（ふだん長いコートとか着ないものでその感覚が珍しかった）
前回、煙草無し旅を宣言していたわけですが、これだけ雨の中をがんばって走っておるのだから、煙草くらいは、ゆるしてやってもいいんじゃないですか、と俺の中の天使と悪魔の意見が一致し、自販機でショートホープを購入。（２８０円）
これが７時前に買っておりますから、走りはじめて、すぐですね。
かように雨は、人の心をむしばむのであります。
でもまあ、鳥居を撮影しながら、ずるずると進みました。
７時を過ぎ、ここから３０キロは雨量が１５ミリをこえたら閉鎖になりますよ、って道になる。閉鎖になるほどの雨じゃあないんだけど、とにかくしんどい。
歩道はあるにはあるが、例によって側溝に蓋をしただけのような歩道で、せまいうえにでこぼこでこぼこつらい。
トンネルも狭くつらい。
雨もまた強くなってきたので、どこかしら雨宿りをできるところはないものかと国道をそれ地元道に入る。
すると国道をくぐる道というかトンネルというのかを見つけそのいわゆるガード下に入り雨宿り。
これが７時１４分。
帽子をとり、雨合羽を脱ぎ、手拭いで濡れた体を少し拭く。
サドルの上には座りにくいので、ぼんやり直立。
やっぱり折りたたみの椅子をもってきたらよかったなあと切に思う。荷物を減らしすぎた。
とりあえず一服。実は非常に空腹だったのだが、煙草しか口に入れるものがなかった。
小便をした。
小ぶりになってきたので出ようと準備をしてサドルに尻をのせたらまた大ぶりになってきてまた出られず、けっきょくスタートしたのは７時４６分。３０分も休んでしまった。
８時。セブンイレブンを見つけたのですぐさま入店。雨合羽と帽子は脱して。
おにぎりとソーセージフランクとラテラテ（３８２円）。
とりあえずおにぎりを胃におさめ、パンと飲み物は前袋におさめた。
雨宿りできそうなところを見つけたら自転車を停め、煙草を喫う、という循環。
おそらく富山町というところに、まだいます。
そして長めのトンネルを抜け、８時２２分、鋸南町。きょなんまち。
雨がまたも強くなってきたので、８時半、館山ショッピングセンター「新平」というところ。開店前です。
軒下で雨宿り。またも休憩。一服。
紙コップ飲料の自販機があったのでホットコーヒーを飲み体を温める（７０円）。夏だよな、いま。
そして８時５０分、本格的に小ぶりになってきたので、ようやく体を動かすことにした。
雨合羽を脱いだ。
９時を過ぎて、道の駅きょなんに到着する。鋸南町だからこのような名だな。
ここには菱川師宣記念館だかがあったみたいなんだけど、師宣にはさしたる興味はないので別に見ず、便所で便を排出し、１５分、スタート。
もう霧雨といっていい空模様だ。
でまあ、これといって、なんということもなく、ただただ走行です。
おもしろいことなんて、ない。
狭いトンネルが多くて、しんどかった、くらい。
９時も３０分ばかりすぎて、ようやく雨もやみ、空からは太陽の光すらこぼれはじめてきました。いやいやよかった。
そのかわりといっちゃなんだが、風が猛烈に強くなってきたので帽子を脱いだ。
まあ、海沿いを走るものとして、強風ってのは避けて通れないものなんですけどね。
あ、日本寺の入り口だ、ここには大仏があったなあ、春に自動車で来たなあ、など思いながら、明鐘トンネル。
明鐘トンネルにはトンネルの外をとおる道があった。海を見ながらだらだらと走り、なんか古いグロリアのワゴンだなあ、など思いながら、また本道へ戻ってきたら、そこは富津市。９時４１分。
ということは俺の記憶によれば、もうそろそろ、町が。上総湊が。
何時ごろなんだろうな、ガスト浜金谷店に。
そういえばね、腹が減ってたんですよ。
８時ごろにおにぎり１個を腹に入れただけだったんで。そりゃ腹も減ります。消費カロリー過剰です。
テレビの前の席に陣取り、ミックスグリルに味噌汁セット、ドリンクバーを注文。（９９７円）
いつもなら、見たって意味もない地図を何度も何度も見返したりするこの休憩時間ですが、地図が無い。
記憶にある地図をたよりに、ぼんやりと計画を練ろうとするが、全体でどのあたりにいるのかもわからない。
ぼんやりと、ノートに日記をつけたり、ヤンキース戦を見たり、ドリンクをおかわりしたり。
距離計によると、現在までおよそ３０キロ進んだ。５時から走ってるのに、３０キロしか進んでない。時速６キロ。ひどいペースだ。
ここまでは歩道も碌にない狭い道だったので、ずっとテールランプを点けていたが、そろそろ消してもいいだろう。というか点けっぱなしで入店しちゃった。
便所がシャワートイレだったので、大きいのを出して尻を洗浄する。
１０時４５分、店を出た。
暑くもなく、寒くもなく、いい感じの、涼しさ。
雨も完全にやんだようだし、そろそろペースを上げるか。（ここまでペースを落としていたわけでもないんだけど）
目の前には浜金谷のフェリー乗り場。
これに乗ると、久里浜まで行けてしまう。
あー、これえーなー、近道やなー、でもそんなことしたらあかんよなー、そらそうや。
まあ、けっきょくのところ。きっちりした歩道も出てきたＲ１２７を快適に走行するわけです。腹も満たされてるし。
右の写真は金谷から７〜８ｋｍすすんだところですね。住吉神社。木造丸貫額あり神明。束なし。四角台石（コンクリ）。細縄。
本殿の部分にでっかい岩がありますね。御神体なんでしょう。珍しい。
で、たしか出発前のメモにもあったと思うんだけど、えーっと、これこれ。
＜Ｒ１２７かずさみなとまで
駅をこえたら左の道に＞
Ｒ１２７がちょっと内陸に入っちゃうので、海に近い道を走ろうと。
左に折れて、すこし坂を下り、おろおろ走っていると海水浴場発見。
新舞子海水浴場という名前でした。
ずるずると自転車を海際に。
自転車から降り、デイパックをおろし、コンクリートでできた平らなところにへたりこむ。
すでにシャツの背中はずぶぬれ。
シーズンも終盤で、海の家も解体中。泳いでるのも中年男性がひとり。
右手には東京湾観音が見える。行ってみようかな。
など思いつつ、俺はあおのけになり帽子を顔にのせ、しばし目を閉じる。
寝てしまう。
１３時前に起き上がり、ようやくまた動き始める。
八幡鳥居の八幡神社などを見て、くねくね走っていると１３時５分、Ｒ４６５。
東京湾観音への登り口があるが、どう見ても上り坂なので、あきらめ、進む。
とんぼを多く見る。もうそんな季節なんだろうか。
富津岬をめざし西へ西へと走っていると、海ぎわの道を走ることになった。自動車の走る道路ではなく、防波堤ぞいの道を。
けして良い道ではなく、じゃりじゃりとした細い道。そもそも道なのかも定かではないが。
でも晴天と涼風が、俺のテンションを上げ、ペダルを下げ。
しばらくすると普通の道に戻った。
思いっきり逆風。
１４時、富津公園。
海水浴場で休憩でもするか、と岬の西端へ向かって、風に向かって走る。ただただまっすぐな、アスファルトの道。
時間的な余裕がどの程度おれにあったのかわからないけれど、これは、あきらかな、寄り道。
岬の先端の海水浴場で休憩。へんな展望台なのかわからんが建物があったが、強風なのでのぼれなかった。
そこそこ人はいた。遊泳可能なところではなかったのか、ジェットスキーふうの乗り物を乗りまわす人たちと、親子連れ。
風でなかなか点かない煙草に苦労しながら、１本か２本喫って、すぐにスタート。
ちなみに、禁煙をこころざしていたため、吸殻入れは持ってきておらず、ここまでずっと、自転車の前袋に入れてました。モラリスト。
１５時７分、Ｒ４６５に。
とおれはＩＣレコーダに吹き込んでいたわけけだが、いま地図をみると、県道９０号へと左折している。Ｒ４６５は右折だった。
富津地区工業用地、とMapFanWebには書いてある。そう、やたらと中央分離帯の広い、道だった。
自動車の進行方向と同じに走っているので、右手に道路、左手に工業地帯。
ほかに見えるものは、ない。
しかも、ものすごい逆風。
腹も減ってきた。しかしこの道をこのまま走ったんでは、いっこうメシにありつけそうにない。
やはり国道だ、と恐らく県道と平行に走っているであろうＲ１６を目指し、右折した。
しばらく走って公園。市民ふれあい公園と言うようだ。何市にいるのかすらもわかっていなかったので、なに市民の公園なのかわからなかったが、今の俺にはわかる。富津市。
適当に公園内を走り、便所を見つけたので軽く用を足し、水で手拭いを濡らし顔などを拭く。
ベンチというのか木製のテーブルのようなそういうのに腰掛け、仰向けになる。
ふう。疲れた。
そろそろ、気持ちが、萎えてきた。
どっかに宿泊してもいいんじゃないだろうか。今日はずいぶん頑張ったんじゃないだろうか。
ふあふあのベッドじゃなくても、サウナとかでいいんですよ。汗を流せて、寒くなければ。蚊がこなければ。
携帯電話の宿検索などをいろいろするが、そもそも自分が何市にいるのかもわからないので、検索できようはずもなく。ＧＰＳなんてついてないですからね。
１６時もすぎ、だらだらしていても仕方がないので、自転車にまたがり少し動くと、イオン系列の大型スーパーを見つけたので入店。イオン富津店だ。メシだ。
というか、富津市だったのか。
ファストフードもよいが、ファミレス的なもので腹にものを入れておきたいなと１階のレストラン街を見ると、サイゼリヤがあったのでそこへ入店。イタリアンハンバーグとライスとドリンクバーを注文（７６６円）。
すんげえビールが飲みたかったのだが、禁煙を反故にしてしまった俺としては、禁酒くらいはスジ通しておきたい、と我慢した。我ながらすごい意思の力だ。
しかしわざわざ喫煙席に座ったのにタバコが切れて、着席しての１本目しか喫えなかった。
タバコも酒もない夕食って、考えたら久しぶりだ。健康的だ。
ドリンクを注ぎに移動したりしながら、そろそろ体が香ばしくなってきたなと、自分でも感じた。他人はもっと感じたんだろうな。
風呂に入りてえなあ。
つうか、いまが富津か。
全体からみると、何パーセントくらいのところに来てるんだろう。地図がないからよくわからん。計画が立てられない。
煙草もないので時間も潰せず、すぐに出た。
同じフロアの書店（ＡＲＫ富津店）に行き、地図を見る。
おお、かなりあるな。まだ全体の半分も来てないのか。
この旅は２日で終える予定なので距離的には半々ずつ、と思ってたんだけどな。
いまからなら、走れて１時間くらいだろう。それからは暗くなってしまう。今の俺は、夜は走らないことに決めてるからな（走り出すと止まらないから）。
暗くなるまでに木更津くらいには行けるのかな。よくわかんないけど。木更津にはビジネスホテルもあるだろうし、頑張ろう。
とりあえず宿に泊まる気まんまんで、東野圭吾の文庫を買った（４９０円）。あとで気づいたが、単行本を持っていた。文庫化の際にタイトル変えるなよ。
で、１７時、イオンを出た。
書店で地図を見るまでは、木更津あたりに宿泊できると思ってたんだが、まあ、無理だ。
かといって千葉市街まで行けるかというと、これもまあ、無理だ。
困ったなあ、と思いながら。
ずるずると道を走ると、青堀駅。
Ｒ１６号に帰ってきた。えらく細いが。
小さな橋を渡ると君津市。１７時１９分。
やはりバイパスである県道９０号を通ったほうがいいなと思い、９０号に移動するが、しばらくするとこの道がＲ１６になった。
風は強い。
前方には思いっきり暗雲。まずいな。
左は防風林、右は中央分離帯がわりの盛り土。なーんもない、道。どんどんうすぐらくなっていく。
そんなころ、どうも自転車がぎいぎい鳴り出した。
どうしたもんかなと思いながら走っているとなかなかに繁華な感じになってきて、ホームセンターというかケーヨーデイツー。
たしかＣＲＣ５−５６はもともとついている油も流してしまうというような話をどこかで見たような気がしたので、スプレーグリスを購入。
店を出て、しばらく走って、吹きかけてみた。うむ。なんとなく良くなったような。
それにしてもＲ１６は、基幹道路というか、いわゆる無理やりどわっと作った道のため、いろいろな道と交差する時、すぐ高架になる。
高架を自転車で走るのは良くないので俺は下の道を通る。
１８時４１分。袖ヶ浦市。
いつ木更津市に入ったのかもよくわからないまま通りすぎてしまった。これがバイパス効果というか、町の中心部を避けて通りますからね。
袖ヶ浦市に入るやいなや東京湾横断道路との交差で大きな歩道橋。
歩道橋の上で休憩。煙草とコーヒーと、軽いストレッチ。足の筋肉はまだ大丈夫だと言っている。
ちょっと前まで地方国道にありがちな、いろいろな店の建ち並ぶ繁華な通りだったんだけど、気がつけばＲ１６は本格的になにもなくなる。自販機もない。まあ、ここまで何度か経験してきたことだからな。困るが。
車は猛スピードで走っており、仕方なく歩道を走る。俺のほかに歩道を通る人間なんてまずいないんだけど、あまり使われないためか路面が草ぼうぼうで、ライトを点灯し小刻みにハンドルを動かし、草を避けながら注意深く走ることになる。神経をすり減らす。
１９時４３分、市原市に入る。まだ同じような道だ。街灯もない。
基本的に左側（海側）は工場ばかり。各工場の出入り口に信号機が設置されている、という感じ。バス停もそのあたりに。
運動しすぎなのか原因はわからぬが、左足がつりそうになってきた。サンダルを脱いで、足をぐにゃぐにゃ動かしながら、だましだまし走行。
休憩したいなあ、と思うが、本当に自販機もなにもないので、どうしようもない。反対車線にはまれに目にするんだが、前述の通り信号機すらあまりないので、なかなか立ち寄ることもできず。
だれも出てこないのに律儀に信号待ちをしていると、足がつりそうになる。困る。
んで２０時２３分、三井化学のところにあった交差点を渡り、タクシー停め場みたようなところの隣の店の自販機でポッカはちみつレモンビタミンＣ入りというのを購入し（１５０）、そのタクシー停め場に入りＲ１６を通る自動車から見えないような位置に腰掛け、ふう。
脚をもむ。ひたすら深呼吸。
もうこんな時間だ。いつまで俺は走ってるんだ。ほんと、自分でもちょっと、アホかと。
案内標識には、東京までごじゅうなんキロと書いてあった。
しばらく休憩をしたあと、スタート。
んで２０時半ごろ、動き出しました。
急に涼しくなった。
おそらく、気温はかわらないんだろう。俺のからだが、正常に戻ったということだ。
自転車は俺のようにのんべんだらりと漕いでいると、そういう、自分の体温とか血流量の変化に、気づきにくいんだな。
２０時３６分、自転車に付けているメーターが、スタートしてから１００ｋｍを超えたことを教えてくれた。
もう１００ｋｍかよ。いつまで走るんだ、俺は。
こんな、なんにもない道を。
順当に時は流れ、２１時を過ぎて少したつと、Ｒ１６はだんだん繁華な感じになってきた。ファミレスなども見えてきた。
しかしもう、俺の体は汗でベタベタだ。明るいお店に入るのが、気恥ずかしい。
これはどうしたものかと思いながら、２１時２９分、千葉市中央区。千葉市についてしまった。
野宿できそうなヒトケのないところなんて、なくなってきた。
と思った俺の視界に「千葉健康ランド」と書かれた看板が。
はやる気持ちをおさえ大きな交差点の地下道を抜けると、その建物は目の前だった。
これまたお粗末な話ながら、何時に入店したのか、記録にない。
サンダルをくつ箱にしまい、そのカギを持ってフロントへ。１５７５円を支払い風呂場のロッカーのカギを受け取る。
すぐに風呂だ。
体を洗う。シャンプーを大量に使う。
風呂は、それほど種類はなく、というか、普通のお湯の風呂が露天にしかなく、まあ、露天は好きなのでいいんだけど、だからずっと露天にいた。
風呂から出て、ＤＡＫＡＲＡを購入し（１４０円）、喫煙所で一服。
なにかが終わったあとの一服はなぜこうも、うまいんだろうな。
もはや飯を食う気も起きず。めしなどを供するところが開いていたかも記憶にない。
とりあえず、寝よう、と思ってリフレッシュルームなる部屋をのぞくが、どうも満席っぽい。空いている席にも、荷物などが置いてあって。
マッサージチェアに１００円を投入。ごりごりごりごり、すんげえ痛い。
映画室。映画を鑑賞すると同時に、眠ることもできる部屋だ。人幅のマットが沢山しいてある。このとき映画は上映されていなかったが部屋は使えるようだったので入ると、空きスペースがあったので、そこに横たわる。
ここはリフレッシュルームよりすこし明るいので、早起きできそうだな。
１時から深夜料金が加算されるので、それまでに起きられれば、そこで出ればいい。風呂に入って、少し寝たら、走れるくらいに回復もするだろう。ってほんとに少ししか寝られないけど。
えらいもので、目覚めます。
でももう１時。
じゃあいいや、と朝まで寝ることに。
というわけで、２７日。
走行距離 １０９．３２ｋｍ
走行時間 ９時間７分５２秒
最高時速 ３６ｋｍ／ｈ
