１８日（前日）

　仕事が終わって、荷物を＜デイパック＞にパッキングして（何を持っていったかについてはそのものを使用した時点で＜＞で明示しよう）、忘れものがないか何度も何度も確認して、背負った。

　重い。細くもないストラップがずしりと肩に食い込む。
　まーいーや、旅が始まれば荷物の大半は＜自転車＞（台湾ブロンプトン）にのっけるんだし。

　三鷹駅へ向かう途中でテールランプを忘れていたことに気づいた。
　家を出て十数分。すでにペダルを重く感じていた俺は迷った。とりに戻るべきか、いらないんじゃないのか？
　じつは悩んだのは数秒だ。というか即決だった。
　他のものなら、無くて俺が困ってネタになるからいいや、と思うけど、テールランプが無くて困るのは俺じゃなく、まわりを走る自動車だ。だからこそとりに戻ったのだった。

　なんだかんだで３０分ぐらいのロス。どこかで飯を食おうと思っていたので、深夜バスの発車時刻には余裕があったがメシ時間が削れてしまった。仕方なくマクドナルドへ。
　店内には「ミックスジュース」（グレチキ）や「サイキック�ｂX」（イエロモン）などが流れていた。
　俺はマクドナルドでファンタを頼んだことがなく、そういえばファンタの何味が出てくるんだろうと思って注文したらグレープだった。俺はファンタはグレープしかないだろとつねづね思っており夜中に発作に襲われ自販機へ走ることもあるのでグレープで良かった。（４６２円）

　買ったばかりの頃から判っていた事だが今だに対策を講じなかった、後輪のブレーキ。ぎゅっと握ったままでも走れるという非常にまずい状態。大丈夫なのだろうか。まーこの状態で７００キロばかり走ってきたんだ、大丈夫だろ。

　駅前の交番の横でマシンをたたむ。買ったばかりの頃は他人の目が気になったが、実際やってみると案外みんな見てこない。俺なんかは、めちゃめちゃ見るんだけどなあ。
　中央線⇒山手線で品川駅。ひとまず自転車を広げ、京急の品川バスターミナルまで乗る。駅前からバスターまでは数百メートルあるので、折りたたむ手間を考えても早いし楽だ。
　バス乗り場。
　去年、バス内の寒さに閉口した俺は、Ｔシャツ一枚ではこころもとないと思って、トイレでもう１枚着た。

　モンベルのシャツ（クールロングＴ）とキャップ（クラッシャーキャップか）を身につけた初老の男性がいた。
　俺はアウトドアメーカーの中ではモンベルに最も金をつぎ込んでいる男なのでおお同志よという感じだったがそのときはノースフェースの＜短パン＞とウルフスキンのＴシャツで＜デイパック＞もノースフェースだったのでなあ。と思ったら外をモンベルのＴシャツを着た若者が歩いていた。
　俺はモンベル好きではあるがモンベル製品を街なかでそんなに見かける事はなかったのに、この短時間に２人も見るとは幸先いいなあと思った。（モンベルの話は、なんか貰えるまで続けます）

　それにしても夜行バスは便利だ。自転車はトランクに入れておけば安心だ。鉄道だと邪魔になるしデッキにおいておくのも心配だし。
　宮古駅（岩手県宮古市）へ向かうそのバスの名はビーム１といった。窓側の席だった。（というかバスに名は必要なのか。そういえば青森行きは「ラフォーレ」だった。西のほうには「レッツ号」なんてのもあるが、お前はレッツ号に乗りたいか）
　去年乗ったラフォーレは７台編成だったが、ビーム１は１台だ。それも空席が見られる。宮古へ行こうって人は多くないのだろうか。そりゃ青森よりは多くはないよな。
　ビーム１は、夜行バスとしてはまあ普通。装備にもべつに過不足はない（音楽が聞けるっていっても、聞きたい曲がひとっつもないよなアレ）。しかしなにより嬉しかった事は、シートにヒーターがついていた事だ。寒さに弱い俺には大変ありがたいものだったのだ。なにしろクーラーの効いた場所で眠るのが１年ぶりぐらいだったのだ。

　２１時にバスはスタート。すぐに消灯になりカーテンを閉めることに。俺は暫くカーテンにもぐり窓の外の景色を見ていたが、高速に入って壁ばっかりになったので、寝ることにした。

　２３時。佐野ＳＡ。なんかぜんぜん寝られない。翌日から、できるだけ寝ない生活なので、このバスでなるべく睡眠をとっておかねばならない、と思いつつトイレに行ったついでにＵＣＣブラック缶を買ってしまう。

　さいきん種類も増えてきた＜ＭＰ３プレーヤ＞である〔Ｒｉｏ５００〕で音楽を聴きながら寝ることにした。持参の＜ヘッドホン＞（ソニーの首の後ろにかけるやつ。ふだんはソニーの耳穴に差し込むちっこいやつを使っているが、脱着が便利というか、装着してないときに首にかけていられるので旅先ではこっちをよく使う。そういう意味では常に耳につけておかねばならない最近の流行タイプはどうかと思うがここで書くことではないな）そう、カッコが長くなったからもっぺん書くけどヘッドホンを使って寝てたら、首が痛くて目覚めた。仕方がないのでバスに備え付けのヘッドホンで聞くことにした。

　それにしても寝つけない。俺は体を横にして丸めて胎児ふうに寝るタイプでありここ数日は本を読みながらナシクズシ的に睡眠に突入しておったのでこういう「さあ寝るぞ寝るぞぜったい俺は寝るんだもんね」的な寝つき方がしっくりこない。隣の席の若女は身動きひとつせず寝入っている。羨ましい。

　寝たり起きたりをくり返しながら４時。紫波ＳＡ。４時に休憩停車するもんかねと思いながらも下車し小便をし紙コップのカプチーノを買って戻った。

　これは翌日になって気づいた事だが、このときＭＰ３プレーヤに入れていたイエロモンの「メロメ」（アルバム「８」収録）の冒頭はこうだ。

「北国へ行くバスに乗って／いらだちを凍らせに行こう／少しぬるいカプチーノ飲み／ゆらりゆられて」

　わー、まんま俺じゃん。

　そしてすぐにまわりは明るくなりバスは６時半前に宮古に到着したのだった。